フロントエンドエンジニアはつらい?よくある悩みと打開策、転職、キャリアチェンジについて解説
HTML、CSS、JavaScriptなどを駆使してウェブサイトやアプリケーションの「見た目」や「使いやすさ」を直接作り上げるフロントエンドエンジニア。コードを通じてデザイン・設計通りに形作っていく作業はクリエイティブな楽しさがあるうえ、仕事の成果がわかりやすいので非常にやりがいと感じるものです。
しかし、その一方で、日々の業務で大きなプレッシャーやストレスを抱えることも少なくありません。
そこで、ここではフロントエンドエンジニアがつらいと感じる場面や悩み、それに対する具体的な打開策、キャリアチェンジの可能性について解説します。
目次
フロントエンドエンジニアはつらいとの声もあるけれど……実は恵まれている!?
IT業界のエンジニアは、数ある職種のなかでも離職率が低いとされています。
厚生労働省が2023年に発表した「令和4年 雇用動向調査結果」では情報通信業(ITエンジニアはここに該当)の離職率は11.9%。宿泊・飲食業や娯楽業などのサービス関連の離職率が19%を超える離職率であることと比べると、エンジニアの離職率は高くないと言えるでしょう。
(参考:厚生労働省「令和4年 雇用動向調査結果」)
離職率が高い業界・職種に共通するのは「業務量や労働時間に見合わない給与」「将来のキャリアアップや年収アップが見込めない」「古い体質の慣習が残る、クレーム処理が多いなどの高ストレス環境」「非正規雇用が多い」「心身の安全衛生面で不安が残る」といった特徴がありますが、IT業界において、このようなマイナスの特徴は徐々に解消されていき、現在は志望者数が多い人気職種となっていることは皆さんがご存じの通り。
今はまさにデジタルの時代。Webサイトやアプリケーションの重要性が増す中、ユーザーインターフェースを開発するフロントエンドエンジニアの需要はますます高まっていますから、一定以上のスキルを持つフロントエンドエンジニアは就職・転職市場でも高需要であり、現在現役でフロントエンジニアの職に就いている方は労働市場という枠の中で見たときに非常に恵まれた立場であるはずです。
厚生労働省の職業情報提供サイト「jobtag」によれば、フロントエンドエンジニアの平均年収は約558万円。国税庁による「令和4年分 民間給与実態統計調査」で日本の平均年収は458万円ですから、収入面でも恵まれていると言えるでしょう。
(参考:国税庁「令和4年分 民間給与実態統計調査」)
フロントエンドエンジニアはつらいよ~フロントエンドでよくある悩みとは?~
高需要で将来性もあり、年収面でも恵まれている……にもかかわらず、「フロントエンドエンジニアはつらい」との声がよく上がります。
フロントエンドエンジニアは他のエンジニア職種と比べて挫折や離職が少ないのが特徴ですが、それでもフロントエンドならではのつらさ・悩みは尽きません。
では、フロントエンドエンジニアが抱えがちな仕事のつらさ・悩みとは、どのようなものなのでしょうか。
新しい技術が次々と現れ、追いつけない不安感
フロントエンドの世界では新しいフレームワークやツール、ベストプラクティスが日々生まれています。ReactやVue.js、Svelteなどのフレームワークはもちろん、ビルドツールやCSSの新しい記法、ブラウザの仕様変更まで、覚えなければならないことが山積みです。「あの技術も覚えなきゃ」「新しいバージョンが出たけど、勉強する時間がない」といった焦りや不安に苛まれることが少なくありません。
デザインの意図を正確に再現するプレッシャー
フロントエンドエンジニアはデザイナーが考えたビジュアルを正確にコードに落とし込むことが求められますが、これが意外と難しいのです。ピクセル単位での調整や、ブラウザごとの挙動の違いへの対応は見た目ほど簡単ではありません。しかも、「デザインと微妙に違う」「動きがなんか違う」といったフィードバックが多く、納得が得られるまでの調整作業が続きます。
また、デザインの意図や細部についてデザイナーと円滑にコミュニケーションを取るためにデザインへの理解も一定程度は必要になるので、プロジェクトによっては「エンジニアだからデザインはちょっと……」と負担に感じることがあります。
バックエンドやデザインとの橋渡し役としての苦労
フロントエンドエンジニアはデザイナーやバックエンドエンジニアと連携しながら開発を進める必要がありますが、各職種の意見や要望が食い違うこともよくあります。たとえば、デザインにこだわりたいデザイナーと、処理の効率性を重視するバックエンドエンジニアとの間で、フロントエンドエンジニアが板挟みになることも。これにより、調整役としての負担が増え、強いストレスと感じるようになる人もいるようです。
予期せぬバグやブラウザの互換性問題
開発が順調に進んでいると思ったら、突然原因不明のバグが発生する……。こんなことはフロントエンドエンジニアにとって日常茶飯事です。特に、ブラウザ間の互換性問題は頭を悩ませる大きな要因です。Chromeではうまく表示されるのに、Safariではレイアウトが崩れる、といったことがよくあります。こうした対応に時間を取られ、予定していた作業が進まないフラストレーションは計り知れません。
エンドユーザーからのフィードバックが直接届きにくい
フロントエンドエンジニアの仕事はユーザーに直接触れる部分を作るため、重要な役割を担っていますが、その努力が評価される機会は少ないのが現実です。たとえば、見た目が美しいインターフェースを実装しても、ユーザーからのフィードバックがダイレクトに届くことは稀で、感謝の声よりも不具合報告が目立つことも。「こんなに頑張ったのに評価されない」と感じることが続くと、精神的に苦しくなるものでしょう。
パフォーマンス最適化のプレッシャー
フロントエンドエンジニアは見た目の美しさだけでなく、ウェブサイトやアプリのパフォーマンスにも責任があります。ページの読み込み速度が遅かったり、スムーズに動かなかったりすると、ユーザー体験が悪化するため、画像の最適化やJavaScriptの最小化、コードの非同期処理など、パフォーマンスを向上させるための最適化作業は必須です。しかし、このような最適化の作業に追われると、仕事の負担が大きくなり、強いプレッシャーを感じることになります。
多様なデバイス対応の難しさ
フロントエンドエンジニアは、PCだけでなくスマートフォンやタブレットなど、さまざまなデバイスに対応したデザインを実装する必要があります。レスポンシブデザインの実装では、画面サイズごとのレイアウト調整や操作性の確保など、想定以上に細かな対応が必要です。特に、想定外の画面サイズでデザインが崩れたり、タッチ操作が意図した通りに動かなかったりする場合、デバイスごとの検証作業には時間と労力がかかります。
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フロントエンドエンジニアが抱えるつらさ・悩みを乗り越えるための具体的な打開策
フロントエンドエンジニアとして働いていると、日々の業務の中で「もう無理かも…」と思ってしまうような悩みに直面することも多いでしょう。しかし、つらいと感じるその気持ちには必ず理由があり、打開策を見つけることで少しずつ状況を改善できます。ここでは、フロントエンドエンジニアならではの悩みを乗り越えるための具体的な解決策を紹介します。
「技術力を高めることが解決策」と思い込まず、効率化やコミュニケーションの工夫、ツールの活用など、様々な角度からアプローチすることで、日々の業務を少しでも楽にしていきましょう。
新しい技術のキャッチアップに追われるプレッシャーを減らしたい:キャッチアップする技術に優先順位を付ける
フロントエンドの世界ではReactやVue.js、TypeScript、最新のCSSフレームワークなど、次々と新しい技術が登場しますが、これらすべてを完璧にキャッチアップしようとするのはやめましょう。
自分の得意分野や業務に直結する技術に優先順位をつけ、まずはそこに注力するのが得策です。「完璧に学ばなければいけない」という思い込みを捨て、必要な部分だけを学ぶ姿勢でOK。
また、公式ドキュメントや公式のYouTubeチャンネルなど、信頼できる情報源を定期的にチェックし、時間を決めて集中して勉強するのも効果的です。
オンラインコミュニティや勉強会に参加すれば最新のトレンドを効率よく学べるので、ひとりで抱え込まずに情報交換を積極的に行いましょう。
デザインの再現に苦しむ時間を減らしたい:デザイナーとの密なコミュニケーションを意識する
微妙なズレやアニメーションの違いを指摘され、何度も修正するのがストレスになっている場合は、デザイナーとの密なコミュニケーションを意識しましょう。
開発前にデザインの意図や優先度をしっかりヒアリングし、「ここは重要なポイント」「ここは調整可能」といった情報を共有しておくことで、細かな修正が発生する頻度を減らせます。また、デザインツール(FigmaやAdobe XDなど)から直接コードを生成するプラグインや、デザインガイドラインを自動生成するツールを活用することで、手作業の負担を減らすのも有効です。
コミュニケーションギャップによるストレスを解消したい:チーム全体で使う共通の言語や基準を整える
バックエンドエンジニアやデザイナーと仕事をする際、技術的な制約や意図の違いでうまく意思疎通が取れず、調整に苦労することはよくあります。
まず、チーム全体で使う共通の言語や基準を整えましょう。たとえば、「このコンポーネントは再利用できる設計にしたい」といった仕様を、プロジェクトの初期段階で全員が理解することが重要です。
また、ミーティングで小さな確認を繰り返すことで、後からの大きな手戻りを防ぐことができます。さらに、Pull Requestでのコードレビューを活用し、コードの意図や背景を共有できれば、相手の理解を深める手助けにもなります。
ブラウザ間の互換性対応を効率化したい:必要最低限の対応に絞り、ツールを活用する
特にインターネットエクスプローラーなど、古いブラウザ向けの対応は多くのエンジニアが頭を悩ませる部分です。動作確認のために、デバッグ作業が想定以上に増え、時間を取られることもあります。
「Can I Use」などのツールで事前に各ブラウザのサポート状況を確認し、必要最低限の対応に絞ることが重要です。PolyfillやCSSハックを活用する場合も、全てに適用するのではなく、必要な部分だけに導入するようにしましょう。また、クロスブラウザテストを自動化するツール(BrowserStackなど)を使って、手動での確認作業を減らし、効率よく互換性対応を進めるのも効果的です。
パフォーマンス最適化にあまり時間をかけたくない:最もパフォーマンスに影響を与える要素を特定して優先的に改善する
考えられる原因の中から最もパフォーマンスに影響を与える要素を特定し、優先的に改善しましょう。画像の圧縮や遅延読み込み(Lazy Loading)、JavaScriptの最小化といった基本的な手法を使い、まずは簡単に実装できるところから手をつけます。また、ChromeのDevToolsやLighthouseを使って現状のパフォーマンスをチェックし、改善ポイントを可視化することで、具体的な改善計画を立てやすくなります。
つらい状況は転職で解決できることも~フロントエンドエンジニアが働きやすい会社とは?~
フロントエンドエンジニアとして働く中で感じるつらさや悩みは、職場環境やプロジェクトの進め方によって解決できる場合があります。特に、技術に対するサポート体制やコミュニケーションの質、働き方の柔軟性が整った企業への転職が解決策になることも。
では、どのような環境が働きやすいのか、具体的な解決策を見ていきましょう。
最新技術のキャッチアップができる環境を選ぶ
最新技術の導入に積極的な企業を選びましょう。
新しいフレームワークやツールを試す機会が多い企業や、技術的なアップデートが頻繁に行われる職場では、日々の業務を通じて新しいスキルを磨けます。また、社内勉強会やオンライン学習ツールのサポートが充実している企業は、技術のキャッチアップに最適な環境と言えるでしょう。
「最新技術の積極導入」「社内勉強会や資格取得支援制度あり」「新しい技術スタックを試せる環境」などといった記載がある企業は、技術キャッチアップに前向きな姿勢がうかがえます。
コミュニケーションが円滑でフィードバックがある企業を選ぶ
アジャイル開発やスクラムを取り入れ、定期的なミーティングやフィードバックの場を設けている企業は、コミュニケーションのストレスが少ない傾向にあります。
仕様変更や期待値のズレが発生した際にも、迅速に対応できる体制が整っているため、安心してプロジェクトに取り組めるでしょう。チームでの情報共有が活発で、意見交換がスムーズな環境は人間関係が良好になるだけでなく、働きやすさにも大きなメリットをもたらします。
「アジャイル/Scrum導入」「チーム内コミュニケーションを重視」「定期的な1on1面談」などの文言があれば、コミュニケーションが活発な環境が期待できるので、求人票では要チェックです。
デザイン実装のサポートが整った企業を探す
デザインの再現性に悩むフロントエンドエンジニアにとって、UI/UXデザイナーとの密な連携が可能な職場は非常に重要です。デザインツールの共有がスムーズで、モックアップの段階からエンジニアが関わることができる企業は、実装時の手戻りも少なく、スムーズな開発が可能です。また、丁寧なコードレビューが行われ、フロントエンドの実装に理解のあるデザインチームがいることもポイントです。
「UI/UXデザイナーとの連携を強化」「デザイナーとエンジニアの共創環境」「コードレビュー文化」「デザインツールの積極活用」などの記載がある場合はデザイン実装のサポートが期待できるでしょう。
柔軟な働き方を提供している企業を選ぶ
リモートワークやフレックスタイム制度の導入など、働き方の柔軟性が高い企業は自分らしく働ける環境を提供してくれます。ライフスタイルに合わせた働き方ができることも、仕事のつらさを緩和するための重要なポイント。自分にとって無理のない働き方ができるかを確認することも忘れないでおきましょう。
「フルリモート可」「フレックスタイム制度あり」「働き方の柔軟性」「ワークライフバランス重視」などの記載は、柔軟な働き方を推進している企業の目印です。
自分に合った環境を積極的に探してみる
技術のキャッチアップがしやすい企業や、コミュニケーションが円滑な職場、デザイン実装のサポートがある企業、柔軟な働き方が可能な職場など、複数の条件を満たしている企業を見つけるのはなかなか難しいもの。
そのようなときには、参画する企業やプロジェクトを選べるタイプのSES企業に転職して、自身に合った仕事を選びながら働くのも手。SESでは、様々なプロジェクトやクライアント先での業務経験を積むことができ、自分のスキルや興味に合った仕事を選ぶ柔軟性があります。
ただし、SES企業であればどこでもいいというわけではありません。各求人媒体には常に多くのSES企業の求人が掲載されていますが、それもそのはず、国内には1万社以上のSES企業が存在しているからです。「自分に合った環境を探す」という観点で転職先を探すのであれば、求人に「案件選択制」「リモート(在宅)案件多数」「未経験分野のプロジェクトに参加可能」「スキルアップ支援」「フロントエンド案件多数」などと書かれているSES企業をチェックしましょう。
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転職で解決できそうもない場合は他の職種へのキャリアチェンジも検討しよう
転職してもつらさや悩みが続く場合、思い切って他の職種へのキャリアチェンジを検討するのもアリでしょう。というのも、フロントエンドのスキルは他の職種にも活かせるポイントが多いため、キャリアチェンジが成功しやすいのです。
では、フロントエンドエンジニアのキャリアが活かせる職種にはどのようなものがあるのでしょうか。よくある例を見ていきましょう。
コーディングで行き詰まりを感じるなら→UI/UXデザイナーへ
コーディングよりデザインへの興味が湧いた場合はUI/UXデザイナーへのキャリアチェンジがおすすめです。コーディングを経験しているとユーザー目線で考える力が磨かれ、デザイナーとしての価値が高まります。
デザイン実装や仕様変更の調整に疲れたなら→バックエンドエンジニアへ
フロントエンドエンジニアはデザインの実装や仕様変更の調整で何度も修正を繰り返すことがあり、ストレスを感じることも多いはず。このような悩みを抱えているなら、バックエンドエンジニアへのキャリアチェンジを検討してみましょう。
バックエンドでは、サーバーサイドの処理やデータベースの設計が中心となるため、デザインの仕様変更に振り回されることは少なくなります。また、APIの設計やシステムのアーキテクチャに興味があるなら、バックエンドの仕事が新たなやりがいをもたらしてくれるでしょう。
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フロントエンドの技術知識があれば制作現場の課題や問題点を技術的な視点で把握できますし、デザイナーやエンジニアとのコミュニケーションもスムーズに進められるでしょう。マーケティング、SEO対策の知識を習得すればキャリアの幅はもっと広がります。
まとめ
フロントエンドエンジニアとしての仕事はやりがいがある一方で、悩みやストレスもつきものです。しかし、それは新しい可能性を見つけるサインかもしれません。エンジニアとしての経験は他の職種でも活かせるので、転職やキャリアチェンジも恐れずに検討してみましょう。
仕事が上手く進まないことで自分自身を責めるのでなく、自分に合った道を探し、より良い働き方を模索することを忘れないでくださいね。
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