SESの案件を抜けたいエンジニア必見!現場を変えるときの方法や手順、注意点について解説
SES企業に所属しているエンジニアが、他のクライアント企業に派遣されて働くSES(システムエンジニアリングサービス)。
クライアントからの依頼は多種多様なのでエンジニアを受け持つ案件も必然的にバラエティー豊かなものになりますが、案件の多様さとエンジニアのやりがいは常に両立するものではありません。今参画している案件から抜けたいと悩んでいるエンジニアは意外にも多いものです。そこで、ここではトラブルなくSESの案件を抜ける方法、実際に抜けるときの注意点などについて解説します。
目次
SESエンジニアはどれくらい存在するのか?
日本のエンジニアの多くはSESエンジニアとして働いているといわれ、7割〜9割がSESエンジニアであるとの説があります。
若手エンジニアにとってSESは最初のキャリアとなることが多いですが、最近では中高年のベテランエンジニアも見かけるようになりました。IT人材の慢性的な不足を背景に、高還元、リモート案件多数、福利厚生の充実などSES企業の”ホワイト化”が追い風となり、年齢や経験年数を問わず、SESエンジニアは年々増えているのです。
しかし、SESエンジニアの労働条件・環境が改善されても、エンジニア自身が望む案件に参画できなければ満足度は落ちてしまいます。SESエンジニアの間ではいわゆる「案件ガチャ」に対する不満はつきものであり、SESを離れる主な理由の一つになっています。
案件を抜けたい・現場を変えたいと悩むエンジニア その理由は?
では、SESエンジニアが「案件を抜けたい」「現場を変えたい」と感じる具体的な理由は何なのでしょうか。
スキルのミスマッチ
たとえば、Javaのバックエンド開発に強みを持つエンジニアが、JavaScriptやReactなどのフロントエンド技術を中心とするプロジェクトにアサインされた場合、自分のスキル・強みを十分に活かせないと感じることがあるでしょう。SES企業によってはエンジニアのスキルに応じた案件が用意されていないことがあるため、結果的にミスマッチが発生するのです。
SES企業もこの点をわかっていないわけではありませんが、エンジニアをアサインしなければ企業として利益が発生しませんし、そもそもSES企業自体がさほど案件を保有していないことが原因で上手くアサインできないことも考えられます。こうした状態が続くと、SESエンジニアはキャリアに対する不安やストレスが蓄積し、「この案件から抜けたい」と強く感じるようになります。
労働環境の問題
SESエンジニアが派遣されるクライアント企業はさまざまであり、中には劣悪な労働環境の企業もあります。長時間労働が常態化していたり、非効率なコミュニケーション体制が取られていたりするクライアント企業で働く場合、モチベーションが大きく下がる原因となります。また、現場での人間関係も看過できません。
少し前はパワハラをはじめとするハラスメントが問題視されていた時期がありましたが、現在はエンジニアを守る体制を強化しているSES企業が増えています。
キャリアの停滞感
同じ案件に長期間携わることで「エンジニアとしての成長機会を逃しているのではないか」と不安に感じるケースも少なくありません。
一般的に、SESの案件の契約期間は数ヶ月~1年程度であることが多いですが、長期契約となれば3年以上になることも。長期案件に参画すれば待機となる可能性がグッと下がるうえ、収入も安定しますが、スキル・キャリアが停滞するリスクもなくはないのです。
技術革新が著しいIT業界においては、最新技術を取り入れられる環境でなければエンジニアとしての市場価値が下がります。
報酬に対する不満
案件単価から差し引かれるマージン料(案件紹介手数料)が思いのほか高く、最終的に支払われる給与に納得が行かなければ案件から抜けたいと思うこともあるでしょう。 スキルが評価されて高単価の案件にアサインされたにもかかわらず、マージン料が高額であれば搾取されていると感じるエンジニアが出てきてもおかしくありません。なかには案件単価をエンジニアにまったく教えないSESもあり、こうした状況は案件への参画はもとより、SES業界全体への不信感を生む原因となっています。
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トラブルなくSESの案件を抜ける方法・手順
上記のような理由から案件を抜けることを考えるSESエンジニアが多いわけですが、抜けること自体は禁止されていません。したがって適切な手順を踏めば無事に問題解決できるので、まずは契約更新時に抜ける場合の手順を解説します。
SES企業側の営業担当者に相談する
案件から抜けたいと思ったら、まずは所属するSES企業の営業担当者に相談しましょう。特に、スキルミスマッチや労働環境が原因である場合はやむなしと判断され、問題なく抜けられる可能性が高いでしょう。またはクライアント先へ是正を申し入れてくれる場合もあります。とにかく早めに自分の状況を社内で共有し、サポートを受けることが重要です。
・1ヶ月前に伝える
抜けたい時期の1ヶ月前にはSES企業の営業担当者に伝えておきましょう。契約更新がある案件の場合も、更新時期の1ヶ月前に更新しない旨を通知しておきます。
契約期間は契約書に明記されているはずですから、案件を抜けることを検討している場合は次回の契約更新時期を確認しましょう。
・引き継ぎをする
案件を抜ける際は、クライアント企業や後任者に迷惑をかけないようにすることが大切です。自分が担当している業務や知識をドキュメント化し、後任者に適切に引き継ぎを行うことで、スムーズに撤退できるようになります。これにより、クライアントやSES企業との関係性も保たれ、次の案件にアサインされやすくなるでしょう。
「立つ鳥跡を濁さず」が大切です。
・損害賠償は請求されないので安心を
手順を踏んで、正しい方法で抜けるのであれば損害賠償を請求される心配はありません。
先ほど説明した通り、クライアントとは直接の雇用関係にはありませんし、所属するSESとの関係においてエンジニアは退職する権利・職業を自由に選択する権利を主張できるからです。
現場を抜けることがキャリアに与える影響は?メリットとデメリット
案件を途中で抜けることには、エンジニアとしてのキャリアに対して良い影響も悪い影響もあります。これらを理解したうえで、行動する際は慎重に検討しましょう。
メリット
・スキルアップのチャンス
案件を変えることで、異なる業界や技術に挑戦できる機会ができます。
たとえば、これまでオンプレミスのシステム構築を主な仕事としてきたエンジニアが、クラウドベースの新しいプロジェクトに参加することで、AWSやAzureといった最新のクラウド技術を習得し、エンジニアとしての市場価値を高めることができるでしょう。
・体調の回復
劣悪な労働環境や過度なプレッシャーから解放されることで、心身のストレスが軽減されます。長時間労働が常態化していた現場を離れ、適切な労働時間でバランスの取れた新しい現場に移れば、仕事へのモチベーションや生産性が向上するケースもあるでしょう。
デメリット
・次の案件への参画が難しくなる場合がある
案件を途中で抜けた経験があると、次の案件で営業担当者があなたをクライアントに売り込みにくくなる場合があります。クライアント側も、途中で案件を辞めたエンジニアを再度起用することに慎重になるため、次の案件選びに時間がかかるというわけです。
・所属するSESとクライアント企業との信頼関係が崩れる場合がある
クライアント企業は、SESエンジニアに対してプロジェクトを完遂することを期待しています。そのため、途中で案件を抜けるエンジニアが多いと、SESがクライアント企業からの信頼を失う可能性があります。
SESの案件を途中で抜ける場合の注意点
SESの案件を抜ける際には、いくつかの注意点があります。これらを考慮せずに行動すると、トラブルに巻き込まれる可能性があるため、慎重に行動する必要があります。
現場で直接「抜けたい」と言わない
SES契約はエンジニアと現場ではなく、SES企業とクライアント企業との間で結ばれています。そのため、現場の上司や担当者と直接「案件を辞めたい」と話すのは避けるべきです。また、現場の担当者には契約についての権限がないことも多く、話を持ち出すと関係者間で混乱を招く可能性があります。 SESエンジニアの単価や働き方などの交渉は、自社の営業担当者を通して行うことがルールであることを覚えておきましょう。
現場に迷惑をかけないように配慮する
SES案件を抜ける際、現場に迷惑をかけないように最大限の配慮が必要です。
たとえば、急に出勤しなくなったり、何の報告もせずに離脱したりすることは、絶対に避けましょう。ITプロジェクトには多くの関係者が関与しており、一人のエンジニアが抜けることでプロジェクト全体に大きな影響が出る可能性があるからです。
先ほども言及しましたが、現場に残るSESエンジニアのためにも、引き継ぎはしっかり行いましょう。
日頃から営業担当者とのコミュニケーションを大切にする
前述の通り、SESエンジニアに関する交渉は派遣元の営業担当者が行います。
営業担当者とのコミュニケーションが不足していた場合、相談するのに気が引けたり、トラブルの解決までに時間がかかったりしてしまうので、日頃から営業担当者とのコミュニケーションを大切にして、近況報告を怠らないようにしてください。
合わない案件にアサインされないためにエンジニアができること~希望の案件で働くためには?~
案件が自分に合わないと感じる原因は、スキルのミスマッチやクライアントの業務内容が自分のキャリア志向と合わないことが多く、SESエンジニアとして働くのであれば、自分のスキルや希望に合った案件にアサインされるための準備や対策が不可欠です。
では、合わない案件を避けるための具体的な方法、そして、希望する案件で働くためにSESエンジニアができることとは何なのでしょうか。
スキルセット・キャリアの方向性を明確にする
エンジニア自身が自分のスキルセットやキャリアの方向性を明確にすることが大切です。これらが曖昧だとSES企業側もどの案件にアサインすべきか迷い、結果としてミスマッチが発生しやすくなります。
具体的には次のポイントを意識して自己分析を徹底的に行いましょう。
・得意な技術やプログラミング言語の特定
たとえば、フロントエンドが得意であればReactやVue.js、バックエンドであればJavaやPythonなど、自分が強みを発揮できる技術をリストアップします。
・希望する業界や業務内容の明確化
金融、医療、エンターテインメントなど、どの業界で働きたいか、またはどのような業務(新規開発、保守運用、システム統合など)に携わりたいかを具体的に整理します。
・今後学びたい技術や分野を考えておく
今後新たに学びたい技術や分野を検討し、ある程度定めてそれを将来の案件選びの基準とします。たとえば、クラウドやAIなど、今後の成長を見越した技術を取り入れたい場合はその方向で案件に参画できるようスキルを学びましょう。
SES企業とのコミュニケーションを強化する
SES企業の営業担当者は、エンジニアを案件にアサインする際、クライアントの要望とエンジニアのスキルをマッチさせる役割を担っています。
そのため、自分の希望やスキルをしっかり伝えることで、より適切な案件にアサインされる可能性が高まるので、以下の点を意識してコミュニケーションを強化しましょう。
・希望条件を具体的に伝える
どのような技術を使いたいか、どの業界で働きたいか、リモートワークの可否など、自分の希望条件を具体的にSESに伝えましょう。単に「〇〇は避けたい」と伝えるだけでは足りません。
・定期的に自分のスキルや状況をアップデートし、それを営業担当者に伝える
新しい技術やツールを習得した際には、SESの営業担当者に知らせることで、それに見合った案件を紹介してもらえる可能性が高くなります。
「最近AWSの認定資格を取得した」「Go言語を使った開発経験を積んだ」など、具体的なスキル向上の報告は非常に有効です。
・営業担当者と信頼関係を築く
営業担当者と良好な関係を築くことで、エンジニアの希望に沿った案件が紹介されやすくなります。営業担当者がエンジニアのスキルや性格、希望をよく理解していれば、案件選びの際に的確な判断が可能だからです。
繰り返しになりますが、普段からのコミュニケーションを大切にし、定期的に状況を共有しておきましょう。
・市場価値を高めるために自己研鑽を続ける
営業担当者といくら連携を強化しても、エンジニアとしてのスキルが不足していれば希望の案件の紹介には至りません。逆に、スキルを磨いて市場価値を上げれば魅力的な案件を紹介することができます。
案件選択制のSESに入社する
合わない案件にアサインされないためには、最初から案件選択制を採用しているSESに入社することも大切です。
案件選択制とは、エンジニア自身が提案された複数の案件の中から、自分の希望やスキルに合ったものを選べる制度のことを指します。この仕組みが整っている企業ではエンジニアが受け身で案件にアサインされるのではなく、能動的にキャリアをコントロールできるので、案件ミスマッチのリスクが大幅に下がります。
SESを選ぶ際には案件選択制であるかどうか必ず確認しましょう。
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まとめ
自分に合った案件に参画することは仕事に対するやりがいはもちろん、今後の成長にも大きく影響します。案件を抜けることに負い目を感じることがあるかもしれませんが、自分のキャリア守るために難しい選択をしなければならないときがあります。
案件を途中で抜けること自体、違法ではありませんから、次のステップに進む勇気を持ちましょう。