COBOLとは?特徴や使われている業界、需要・求人動向、将来性についても解説
COBOL(コボル)は、1959年に誕生した歴史のあるプログラミング言語です。そのため、時代遅れの言語として挙げられることが多いですが、今現在でも多くの企業のシステムで使われている現役の言語であり、求人も意外にも多いのをご存じでしょうか。
そこで、ここではCOBOL誕生の経緯や基本的な特徴、使われている業界、求人動向、そして将来性について詳しく解説します。
目次
COBOLとはどのような言語なのか?
COBOL(コボル)は、1959年にアメリカで誕生したプログラミング言語です。COBOLは「Common Business-Oriented Language」の略で、開発には膨大なデータを迅速に処理することを主眼としてアメリカ国防総省の主導のもと、業界団体や企業、学術機関が協力して開発しました。
以降、1970年代にかけて多くの企業や行政機関で採用され、現在も欧米諸国の業務システムや行政システムで稼働しています。
時代とともに新しいプログラミング言語が登場したことで人気は低下しているものの、その安定性と長年の実績から今なお存在感を放ち続けているCOBOLは、1957年に誕生したFortran(フォートラン)とともに現在のIT社会の土台を作り上げてきた立役者であることは間違いありません。
「レガシー言語」や「化石言語」としてマイナスのイメージを持たれがちなCOBOLですが、歴史と実績は決して侮れない偉大なプログラミング言語なのです。
COBOLの特徴~COBOLで何ができるのか?~
COBOLはその特徴から多くの大規模システムで使用されてきました。誕生から60年以上にも渡って稼働し続けるCOBOLには一体どのような特徴があるのでしょうか。COBOLのメリットとデメリットと併せて見ていきましょう。
COBOLの特徴の全体像
大規模なデータ操作や処理に強いという特徴があり、金融機関や行政機関など膨大なデータを扱う分野で広く使用されています。
また、COBOLの文法は英語に近く、読みやすさと理解しやすさも特徴の一つ。たとえば、「ADD」や「SUBTRACT」といった英単語がそのまま使用されるため、非技術者でもプログラムの内容をある程度理解できるという長所があるのです。
<サンプルプログラム:数値の合計を計算>
IDENTIFICATION DIVISION.
PROGRAM-ID. AdditionProgram.
DATA DIVISION.
WORKING-STORAGE SECTION.
01 NUM1 PIC 9(3).
01 NUM2 PIC 9(3).
01 RESULT PIC 9(4).
PROCEDURE DIVISION.
DISPLAY “Enter the first number: “.
ACCEPT NUM1.
DISPLAY “Enter the second number: “.
ACCEPT NUM2.
ADD NUM1 TO NUM2 GIVING RESULT.
DISPLAY “The sum of the two numbers is: ” RESULT.
STOP RUN.
COBOLのメリット
COBOLには英語に近い文法ゆえの理解しやすさ、データ処理能力のほか、次のようなメリットも持ち合わせています。
・高い信頼性と堅牢性
厳格な文法と充実したエラーハンドリング機能により安定した稼働を維持できます。また、英語に近い文法で書かれたコードは可読性が高く、メンテナンスも比較的容易なため、システムの堅牢性は高いです。
・レコード指向
データをレコード単位で処理するのに適しており、ビジネスアプリケーションでの帳票処理やレポート生成に適しています。
・高い可搬性
異なるコンピュータシステム間でプログラムを移植しやすい設計になっています。
・強いバックワードコンパチビリティ(後方互換性)
新しいバージョンのCOBOLでも、古いプログラムがそのまま動作するように設計されています。
COBOLのデメリット
上記のようなメリットがる一方、COBOLがシステムプログラムの主役とならない次のようなデメリットもあります。
・リアルタイム処理が難しい
COBOLはバッチ処理に適していますが、リアルタイム処理には向いていません。即時性が求められるアプリケーションには不向きで、迅速な対処が求められる場合には他のプログラミング言語に劣ります。
・新規開発に適していない
COBOLは伝統的に手続き型言語であり、オブジェクト指向プログラミング(OOP)のサポートが限られています。したがって、OOPの概念を活用することで得られる再利用性や柔軟性が乏しく、流行りの新しいアプリケーションの設計は難しいとされています。
・リソース消費が多い
COBOLのプログラムは他の言語に比べてメモリやCPUリソースを多く消費することがあります。特に古いCOBOLシステムは、モダンなハードウェアの性能を十分に活かせない場合があり、効率的なリソース管理が難しいです。
・COBOLを扱えるエンジニアが少ない
COBOL全盛期のエンジニアは現在高齢化しているため、COBOLを扱えるエンジニアの数が減少しています。このような状態ではCOBOLエンジニアが希少となり、結果的に人件費がかさむことになりますから、企業や機関にとって大きなデメリットです。
・故障時の対応が難しい
昔構築されたシステムの場合はシステム自体が複雑である可能性が高く、古い言語ゆえドキュメントに不備があることも多々。さらに、古いハードウェアの部品入手が困難、上記のような人件費の高騰などにより、故障時の対応が難しいというデメリットも無視できません。
COBOLで何ができるのか?
現在流行りの言語と比べて柔軟性が低く、扱えるエンジニアが少ない、故障時の対応が難しい……COBOLにはこのようなデメリットがあるものの、ビジネス分野においては強力な機能を持つプログラミング言語であることには変わりありません。
では、COBOLで具体的に何ができるのでしょうか。今度はCOBOLでできること、すなわち、COBOLの得意なことについて詳しく見ていきます。
・トランザクション処理
銀行やクレジットカード会社ではお金の出し入れや支払いの記録を毎日大量に行いますが、COBOLはこうした大量の計算や取引記録を正確に素早く処理するのが得意です。ATMでお金を引き出すとき、その取引が正確に記録される仕組みを支えています。
・バッチ処理
バッチ処理とは大量のデータを一括して処理する方法のことを指しますが、COBOLは毎月の給与計算や売上集計、データのバックアップ、在庫の更新など、大量のデータを一定時間内(夜間や週末など)にまとめて処理するシステムを作るのに適しています。
ただし、こうしたバッチ処理は一括処理であるためデータの更新がリアルタイムではありません。つまり、データの反映が遅くなるので通常業務がない夜間や週末にバッチ処理を行うのです。
・レポート作成
COBOLは複数のデータから情報を集めてデータを集めて自動的にわかりやすいレポートを作成することが得意なので、売上や経費、顧客の購買履歴などの報告書作りはお手のもの。ただし、既存のレポートフォーマットを変更する場合はプログラムの改修が必要となるため、手間がかかることがあります。
・データベース操作
企業は顧客情報や製品情報を大量に管理していますが、COBOLはこうした大規模なデータベースにデータを追加したり、更新したり、必要な情報を取り出したりするプログラムを作ることも得意としています。わかりやすい例では、顧客の住所変更をデータベースに反映するプログラムなどです。
・財務システムの管理
財務システムでは計算の正確性が非常に重要ですが、COBOLは精度の高い計算を行うための機能が充実しており、ミスのない財務データの管理が可能です。企業の会計や財務管理もCOBOLの得意分野なのです。
COBOLは上記のような大量のデータを扱う業務で評価され、現在に至るまでさまざまな企業で使われ続けています。COBOLが日々大量の計算と取引記録が必要な金融機関の業務システムで活躍し続けている理由がわかりますね。
COBOLが使われている業界
大量のデータ処理が発生するところにCOBOLあり。COBOLは使われているのは金融業界や行政機関だけではありません。ここで改めて、COBOLが使われている業界を確認していきましょう。
・金融機関
COBOLを語るうえで金融機関は外せません。銀行やクレジットカード会社では毎日の口座管理、振り込み、支払い処理などを正確かつ迅速に処理するためにCOBOLが活躍しています。これにより、誤差なくお金の移動が行われ、安全な取引を維持しているのです。
・保険業界
保険会社では契約管理や保険金の支払いシステムにCOBOLが使用されています。高いデータ処理能力を持つCOBOLで構築された業務システムで保険契約のデータを管理し、顧客の保険金請求に対応することにより、保険金支払いの正確性と迅速性が実現するわけです。
・行政機関
税務システムや社会保障システムといった行政分野においてもがCOBOLが活躍しています。このような行政機関のシステムは国民の税金申告や年金の支払いなど、大規模なデータを正確に処理する必要がありますが、COBOLの堅牢なシステムにより、これらの重要な業務が着実に行われているのです。
・医療機関
医療機関における患者の診療記録の保存、治療費の計算、保険会社への請求処理などにもCOBOLで構築された業務システムが使われていることがあります。
・小売業界
大規模小売チェーンでは在庫管理や販売管理システムにCOBOLが利用されていることがあります。COBOLで構築された業務システムで各店舗の売上データを集計し、全体の在庫状況を把握することで在庫切れの防止や効率的な商品補充が可能となり、顧客満足度の向上につながっています。
・製造業
製造業では生産管理システムや物流システムにCOBOLが使われ、生産スケジュールの管理、原材料の在庫管理、製品の出荷計画などが行われています。COBOLは生産プロセスの効率化、コスト削減、納期の短縮などにも貢献しているのです。
・交通機関
航空会社においては乗客の予約管理や搭乗手続きのサポート、運行スケジュールの管理システムの構築にもなどCOBOLが使われています。COBOLといえば金融機関で使用されているイメージが強いですが、交通機関におけるスムーズな運行管理とサービスの向上にも大いに役立っています。
・教育機関
大学や研究機関でもCOBOLが使われていることがあります。具体的には学生の成績データの管理、成績証明書の発行、研究費の管理、経費精算などが挙げられます。
COBOLの求人動向~COBOLしかできなくても転職できる?年収は?~
IT業界は非常にダイナミックで、技術の進化が速いことで知られています。新しい技術が次々と登場し、それに伴ってかつて主流だった技術が廃れていくことも珍しくありません。
そのような”激流”のなか、長期にわたって地味に活躍しているのがCOBOLであるわけですが、これはCOBOLにいまだ需要・求人があると見ていいのでしょうか。
現在のCOBOLの需要
COBOLは金融機関や政府機関など人々の生活を支える社会インフラ分野の業務システムで使われていますが、システムを他の言語に変更しようとすると予期しないシステムの不具合やデータの消失・不整合といったトラブルが発生し、人々の生活に重大な影響が出る可能性があるため、COBOLはそのまま維持されやすいのが実際のところと言えるでしょう。つまり、「モダンな言語を導入するより、今まで通りCOBOLを使い続ける方が安定的な稼働が保たれやすい」ということ。
したがって、COBOLを使ったシステムの保守運用に対応できるエンジニアの需要は依然としてあるのです。
2020年のコロナ禍、アメリカの一部の州でCOBOLを扱えるエンジニアが緊急で募集され、エンジニア界隈では非常に話題になりました。これには失業手当の申請が新型コロナウイルス感染症の蔓延によって急激に増えた結果、システムがダウンした背景があります。改修と保守のためにCOBOLに対応できるエンジニアが必要になったのです。
こうしたことから、大手金融機関や行政機関の業務システムで使用されている以上、COBOLは健在であり続けるでしょう。
COBOLエンジニアの求人動向と平均年収
IndeedやLinkedInなどでで「COBOLエンジニア」と検索すると、現在でも多数の求人が見つかります。これらの求人の多くは金融機関や保険会社をはじめとする大企業のシステムの保守・運用のポジションです。保守運用といえども、COBOLの経験が豊富なエンジニアは高い年収を提示されることもあります。
COBOLエンジニアの平均年収は500万円前後であることが多いようですが、フリーランス向け案件の単価では経験3年以上で70万円を上回るものもありますから*、やり方によっては高収入が狙える点はぜひ覚えておきましょう。
(*参考:IDHフリーランス「フリーランスエンジニアのための単価相場ガイド」)
COBOLエンジニアが足りない!
需要は依然として高いものの、COBOLエンジニアは年々少なくなっています。高齢になって引退するエンジニアが増える一方、若手エンジニアはPythonやJava、Rubyなどのモダンな言語を学ぶことが多いため、COBOLエンジニアの需要に対して供給が不足している状況が続いています。
転職の可能性
需要に供給が間に合っていないのがCOBOLエンジニアの現状ですので、COBOLしかできない場合でも転職の可能性は十分にあります。COBOLの経験が豊富であれば、金融機関や保険会社などの求人(案件)に応募できるでしょう。
しかし、そうはいってもIT業界のエンジニアでいる限りはモダンな言語も押さえて仕事の幅を広げておきたいもの。PythonやJava、JavaScript、Rubyといった言語を習得しておけば、応募できる求人も多くなりますし、スキルも年収もアップします。
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”レガシー言語”COBOLの将来性
「いずれは使われなくなる」といわれ続けてきたCOBOLですが、60年以上存続してこれたのは、社会インフラのシステムに採用されてきたことが大きな要因だと言えるでしょう。日々安定した稼働がもっとも重視される金融機関や行政機関にとって、新しい技術の置き換えときに発生し得る稼働停止リスクは回避いなければならないからです。
また、最近では新しい言語や技術と組み合わせて使われることも増えてきているのをご存じでしょうか。
COBOLとJavaやPythonなどのモダンな言語と連携させてシステムの機能を拡張し、柔軟性を持たせるなどが代表的な例です。これにより、既存のシステムを維持しつつ、新しい技術のメリットも享受できるようになります。
COBOLは「レガシー言語」(現在の主流ではない、古い言語)として位置付けられていますが、その信頼性と堅牢性から、今後も特定の分野で重要な役割を果たし続けるでしょう。特に金融業界や行政機関では今後もしばらくはCOBOLの需要が続くと予想されます。
まとめ
COBOLエンジニア年々は少なくなっていますが、保守運用での需要は依然として高く、ここ最近はその存在感が高まりつつあります。今後も続々と新しい言語・技術が登場し、業界全体の変化が進む中で、COBOLの役割がどのように変わっていくかは予測が難しい部分もあります。しかし現在のところは依然として多くのシステムを支える重要な言語であることは確かです。
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